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有田昌史「ものづくり○△□(まるさんかくしかく)」

① 水引

最近、制作の現場で度々感じることのひとつに“古風な生活様式に根ざした機能美の再発見”があげられます。世田谷ものづくり学校1F・旧校長室アトリエの入口に飾ってある水引のオブジェもそのひとつですが、そこには機能という意味のなかに、人と人を内面から結びつないでくれるような、コミュニケーションツールとしての有用性も含まれています。
水引のルーツを辿ると、はるか昔、遣隋使・小野妹子の時代にまで遡っていけるのですが、らにその奥には、「縄文」由来のアニミズムや「弥生」経由のシャーマニズムが静かに脈動してて、紅白が織りなす多種多様な結びのフォルムは、今の時代にこそ新鮮に映るコンテンポラリーな魅力に富んでいます。
世界中の伝統手工芸を見渡すなかでも特筆すべき様式美をもつ水引ですが、私たち日本人にとっては、ごくポピュラーな形で日常のなかに浸透し、コミュニケーションの在り方そのものにまで美しい秩序を生み出しているようです。
この国に受け継がれて来た造形力は、人々が心の中でのみ感受しうるような、形をもたないのにまで形を与え、その造形の在り方から美しい作法や礼節までも導き出しているのでしょう。
これらの能力は、例えば「伊勢の遷宮」に見られるような、“無即有”を自在に行き交う希有な叡智として、私たち日本人の心の奥底に生きづいているものかもしれません。

有田昌史(ありた・まさふみ) 
1966年出雲生まれ。布の図案作家。名古屋芸術大学客員教授。女子美術大学芸術学部講師。孔版印刷研究所/ I I D・旧校長室アトリエを拠点に作家活動、教育活動、企業の企画開発を行う。