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今月の特集

今月の「学校」
「学校園」でつながるものづくり

取材・文:小林英治  写真提供:学校園とミドリノ

児童や生徒を自然に親しませ、自然科学の学習に活用させるため、学校内に作った農園や花園のことを一般的に学校園と呼びます。IID 世田谷ものづくり学校( 以下IID )にも正門からエントランスまでのアプローチや、裏庭、カフェの外の一画など、さまざまな草花が植えられています。その名もズバリ「学校園」として、本来の自然との関わりをものづくりや暮しに活かすワークショップを行うフリーランスキュレーターの石田紀佳さんとガーデンデザイナーの塚田有一さんにお話をうかがいました。

 

ものづくりの原点を身体で感じるために

―― お2人が出会ったきっかけと「学校園」を始めた経緯を教えてください。

塚田 僕が雑誌の仕事で藍の生葉を扱っている人を探していたとき、人づてに石田さんを紹介してもらったのが出会ったきっかけです。

石田 私は友人から「雑木林のような庭を造りたいと言っている人がいる」という噂を聞いていて、そんな人がいるんだと気になったことがあったんですけど、会ってみたらその人が塚田さんだったんです。

塚田 その頃、日本の若手のデザイナーが作る家具や建築を見ても惹かれるものがなくて、それはどうしてだろう?と考えた時に、ものづくりに携わる人が自然から遠のいている、風土から離れてしまっているからではないかと感じたんです。物がどこから来てどこへ行くのか、そんな原点を感じれるようなことをしたいと、僕が独立をした時に石田さんに相談したんです。ちょうどIIDが発足する時で、ここならできるんじゃないかと。

石田 最初は放置されて荒れていた裏庭を整備して、藍を育てるところから始めました。夏に収穫した生葉で初めて染めたときに塚田さんがとても感激していたのを覚えています。

塚田 それまで染色はしたことがなかったんですけど、藍をすりつぶした時のぬめぬめした質感や、香る匂い、そして色。植物の体液、人間で言ったら血みたいなものをもらってるんだということが分かって、戦慄を覚えたというか。そして「青」と一言で言い洗わせないグラデーションの美しさに感動しました。そして、できればこれを伝えたい、共有したいと思って、IIDでワークショップをやらせてもらうことになりました。

石田 他にも、IIDの敷地内に自生しているビワなど、いろいろな草木染めのワークショップをしています。その中でも藍は、人間と自然の関わりにおいていろいろな象徴性がある植物だと思いますね。

 

―― 8年目に入り、現在は他にもさまざまな活動が広がっていますが、一貫しているテーマはありますか?

石田 1つは、ものづくりの現場がバーチャルになってきている中で、その材料となるものを作りたい、見て欲しいということがあります。もうひとつは、「循環」ということで、野草や作物を育てて収穫したものを実際に生で味わったり、保存食にしたり、庭仕事で出た剪定枝は土に還すようにしています。

塚田 季節ごとのお節供では、花を生けて節供にちなんだ食べ物を食べ、身体でその旬の力をいただくことを体感してもらっています。それと「都市の中の緑」というか、都会の中ならではの庭や緑の面白さも伝えていきたいです。IIDの敷地内でも、表と裏庭、グランドと接している土など、環境によって合う植物も違っていて、多様性があるんです。それも1つの風土であると思います。

 
 
 

「学校園」の取り組み・ワークショップ

 
藍染め・草木染め
学校園のスタートのきっかけになった藍の栽培と染め物。この3月には、7年間貯めていたタデ藍の乾燥葉を使用して染めを行った。IIDのワークショップでは、その他にもビワやヨモギ、サクラ、ツバキなど、庭仕事とあわせた季節ごとの草木染めも行っている。

 

お節供
いわゆる五節供は、古来ひとびとが季節の節目としてきたものの集大成でもあり、宮廷の年中行事でもありました。学校園では節供にちなんだワークショップを季節ごとに開催し、節供料理から食のルーツを探るなど、古来からの知恵を体感する。食は「巡る庭」とも連動し、学校園の活動の重要なテーマのひとつ。

 

巡る庭
来校者を迎えるアプローチにある宮沢賢治にちなんだ「泪ぐむ眼」という名の花壇をはじめ、藍から豆までさまざまな植物・作物を植えて循環型の庭づくりを行う裏庭など、人々の気持ちを潤し、自然に触れることのできるさまざまな場所をIIDの敷地内につくり、整備している。

 

活け花
巡る庭で詰んだ野草や草花を、塚田さんのアドバイスも受けながら思い思いに活け、季節を味わう。参加者全員で1つのインスタレーションをつくっていく「めぐり花」など、従来の華道とは違ったアプローチで、自然との対話を楽しんで暮らしへ取り込む試みも行っている。

 

学校園

塚田有一(つかだ・ゆういち) 有限会社温室代表。フラワーアーティスト、ガーデンデザイナー。活け花、作庭、ランドスケープ、ワークショップ他、風と土の声に耳をかたむけ、みどりと暮らすプロジェクトを様々な場所で企画。「学校園」は今年で8年目を迎えた。http://onshitsu.com

石田紀佳(いしだ・のりか) フリーランスキュレーター、プランナー。美術手工芸品を展覧会企画や執筆で紹介。手仕事の素材の育成から制作工程までに興味がある。著書に『藍から青へ』(建築資料研究社)、塚田有一との自家本『すくう』。現在、雑誌『マーマーマガジン』と『スピナッツ』で連載をもつ。草虫こよみ http://xusamusi.blog121.fc2.com/
☆学校園の活動情報はIIDサイトまたは「巡る庭」blogをご覧ください。http://meguruniwa.blogspot.com/

IID GREEN DAY vol.9-みどりの学校-
4月27日(土)に開催されるIIDの全館イベントIID GREEN DAY vol.9-みどりの学校-では、学校園のお2人が「みどり に もぐる。」に関連したワークショップやイベントをキュレーションし、例年より一歩踏み込んだアプローチでみどりを体感します。皆さまお誘い合わせの上、是非ご参加ください。
詳細はウェブサイト及びGREEN DAYチラシをご覧ください。