西谷真理子「女子の強気」

第1回 黒河内真衣子(ファッションデザイナー)

文 西谷真理子(編集者・high fashion ONLINE チーフエディター)

今や、ことさら女性とは、と強調する時代でもないけれど、おもしろい女たちが出てきている。その何よりの強みは、気の強さと度胸だ。そして作るものは、繊細。大きくマスコミを騒がすことはなくても、ファッション周辺で、じわじわと地歩を進める女性クリエーターたちの仕事をご紹介。

「たおやかで強い、ナウシカのような服」

黒河内真衣子さんは、mame(マメ)というデビューして2年目の小さなブランドのオーナー兼デザイナーだ。ファッションショーをやるだけの資本力も、ショップもまだない。発表する服の点数も少ない。にもかかわらず、ファッション関係者の間で、mameは大変な注目株だ。ただしその服は、20代の女性が作ったいわゆる“かわいい”服では決してない。紺やベージュ、赤と色数も抑え、シンプルな中に非常に凝った刺繍や絶妙な切り替えなどのテクニックが盛りこまれた上質な大人の服である。

「女性が自らの意識をより高度な位置へと昇華させるために纏う、たおやで力強い『現代社会における戦闘服』を私は追求していきたいと思うのです」と黒河内さんは、mameのサイトに書いている。平和な時代であっても、日々生きるということは、仕事や恋などの現場で次々と繰り広げられる戦いを生き抜くこと。その時に、付き添ってくれるのが、mameの服であったら、という願望がこもっている。

最新作、2012年春夏の服のテーマは「日常の中での想像の旅」。『TRANSIT』という旅の雑誌のメキシコ特集号がインスピレーションの元である。単にメキシコの青い海や歴史遺産ではなく、雑誌の誌面がインスピレーションの元になっているというところがユニークだ。レイアウトの余白の取り方、雑誌に掲載された写真の色調から受け取ったものが服になったコレクション。そのイマジネーションの中で、まるで錬金術のように紡がれた服は、そんな予備知識がなくても、強く訴えかけて来るものがある。優しげだが、優しいだけの服ではない。それはどこか、風に乗るナウシカのドレスのようである。

黒河内真衣子(くろごうち・まいこ) 
2006年、文化服装学院卒業後、(株)三宅デザイン事務所に入社。A-POCの企画、イッセイ ミヤケのパリコレクションの企画、デザインを担当。 2010年、黒河内デザイン事務所設立、自身のブランド「mame」(マメ)を立ち上げる。
http://www.mamemamemame.com