今月の特集

今月の「ものづくり」
有田昌史さんと行く「 リソグラフ・バーコ印刷 」の工場見学


現在でも学校や役 所などで広く使われているデジタル印刷機「リソグラフ」。理想科学工業株式会社( R I S O )では 、リソグラフにバーコ印刷と呼ばれる隆起効果を出す特殊印刷の技術を組み合わせたプリントサービスを行っていると聞き、IIDに孔版印刷研究所を構えるテキスタルデザイナーの有田昌史さんと印刷工場(東京プリントセンター)の見学に行きました。
取材・文 小林英治 写真 橋本裕貴

 

―― 今日は「リソグラフ・バーコ印刷」という特殊な印刷加工を見せていただくわけですが 、そもそも 、「リソグラフ」というものが、コピー機のように見えてまったく違う原理でできた機械なんですよね。

そうですね 。孔版印刷という、版にあけた穴( 孔 )からインキを浸透させる印刷方式を使用していて、原理としてはシルクスクリーンと同じです。RISOは謄写印刷(ガリ版)業からスタートしていますが、オリジナルのインクを開発したのをきっかけに、熟練の技術を必要とせず誰もが手軽に印刷ができる印刷機の開発を目指し、1980年に世界初の自動インキングが 可 能 な「リソグラフ」を開発しました。

―― RISOさんがリソグラフ・バーコ印刷のサービスを始めたきっか けを教えてください。

現在では、リソグラフも紙原稿だけでなく、パソコンで作成したデータや、USBメモリ ーに保存したデータのダイレクトプリントが可能です。リソグラフの特徴であるスピーディーかつ低コストという利点を生かして、従来の活版やオフセットで行なわれていたバーコ印刷という特殊加工を組み合わせ、他にはない新しい印刷ができないかと考えました。実際にプリントサービスを開始したのが2010年です。

―― バーコ印刷という加工についても詳しく教えてください。

印刷した部分に、インクが乾く前にパウダーを付着させて、加熱・融解させることでツヤのある立体的に盛り上がった印刷効果を出す技術です。アメリカのバーコ社が開発したのでこの名前で呼ばれています。活版やオフセットのバーコ印刷では、名刺やDMの他、CDジャケトや書籍カバーのロゴやタイトルに使用されることが多いです。

―― なるほど、さきほどいただいた皆さんの名刺もバーコですね。では、リソグラフ・バーコ印刷が、従来の活版やオフセットのバーコ印刷と違う点はどこにありますか?

原稿さえあればすぐにバーコ加工ができるところですね。リソグラフは通常のコピー機と同じような感覚で印刷ができますので 、活版やオフセットのように版やフィルムを作る必要がありませんから。その分、時間もかかりませんし、価格も抑えられます。

―― 活版やオフセットと仕上がりには差はないですか?

文字などではほとんど差はありませんが、広いベタの部分で多少の色むらが出たり、版を重ねると見当ズレが起きることがあります。それを逆にクリエイターの方々に面白がってもらえたら、私たちが考えつかないような新たな表現が生まれるのではないかという期待も持っていますので、いろんな方の創造性に触れてみたいですね。

―― 今回、有田さんに用意していただいたのはファブリックの絵柄ですから、どんな仕上がりになるか楽しみですね。では、早速工場で試してみましょう。

 

STEP1: パソコンで作成したデータをリソグラフに転送して製版。試し刷りをしながらインクの量などを調整していきます。今回使用する色は、鮮やかな青と朱色。

STEP2: 印刷物はリソグラフの排紙部に接続されたベルトコンベアに乗ってバーコ加工のラインへ。バーコの機械の入口で元となる白い粉をふりかけ、出口で印刷部分に付着しなかったパウダーを吸引します。

STEP3: 続いてオーブンのような加熱機の下を通過。その温度は何と400度を超えることもあります。インクに付着したバーコの粉が溶けて混じって盛り上がり、出口ではバーコ独特のツヤツヤした凸面ができています。

STEP4: 最後に熱されたバーコと紙を冷やす冷却装置の下を通過して完成です!
リソグラフの出力から完成まで、1枚あたりたったの26秒でした。バーコ加工の独特なツヤと感触は、ぜひ実物を触って実感してください。

 

リソグラフ・バーコ印刷の魅力と可能性

リソグラフ・バーコのこの質感、個人的にはとても好きです。通常のバーコ印刷とはひと味違う面白みを感じます。今回試したのは、もともとファブリックの柄なので、仕上がりにこういったテクスチャーがある方がいいんですよ。音楽用語で例えると“テクノポップ”って感じですね。技術としては新しいんですけど、仕上がりのこういったモアレ感覚にも遊び心が見え隠れして、そこがRISOさんの会社の魅力にもつながっていると思います。何と言っても過去にプリントゴッコを開発した会社ですからね。家庭にパソコンが普及する前に年賀状でお世話になった人も多いでしょう。デジタルっていうと普通完璧に計算されたものをイメージするけど、このリソグラフ・バーコの場合、プリントゴッコや最近のゴッコプロ( RISOの最新デジタルスクリーン製版機)にも通じる“アナログ的なゆるさ”みたいなものを感じます。

リソグラフ・バーコの表現としては、色も原色的なものが合っている気がします。色の制約があるからこそ 、シンプルな初期衝動が楽しめる。このようなベタ部分の多さがエンボスの質感をむしろ良くしてますよね。偶発的なムラを楽しむ遊び心があれば、表現としてもかけ算しやすいし、感覚的な自由度の幅があるほど遊べるんじゃないでしょうか。手書きのものをスキャンしたり写真のデータを加工してギミックの効いた画像もできるでしょう。学生さんにもどんどん利用してもらいたいし、ワークショップに活用しても面白いですよね。

今回は、DM用に活版バーコを試しましたが、この工場では、リソグラフだけでなく、活版によるバーコ印刷もできるのが素晴らしいと思います。活版もあるしリソグラフもある。クリエイターとしては、それだけ表現の振り幅を与えられてるわけで、発想が広がります。最近は活版による印刷物を収集したり名刺をつくっている人も多いですよね。今後は、この技術を活用して、新進の作家やファインアートの要素を持った表現者もプロデュースしてみたいですね。

有田昌史(ありた・まさふみ)
1966年出雲生まれ。布の図案作家。名古屋芸術大学客員教授。女子美術大学芸術 学部講師。孔版印刷研究所/IID・旧校長室アトリエを拠点に作家活動、教育活動、 企業の企画開発を行う。

 

リソグラフ・バーコ印刷のご注文、お問い合わせは、RISO SUTUDIO日本橋店へ。
RISO STUDIO日本橋店
http://www.riso.co.jp/pt/shop/nihonbashi/
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