草彅洋平「世田谷酒日記」

第四酒 下高井戸 恋々風塵

「世田谷にこんなシブイお店があるんだ!」という、僕の静かな感動を連続で紹介してきた本連載。今回はシブくはないが「こんなスゴイお店もあったんだ!」と思わずのけぞる、奇跡を起こすお店を紹介したい。京王線「下高井戸駅」北口踏切側1分にある「恋々風塵」だ。店名は台湾の映画監督ホウ・シャオシェンの作品から名づけられた。

店長のRUIくんから「お店やろうと思ってるんだよねえ~」と相談されたのは昨年はじめ。聞けば好立地で物件が出たのだそうで、タイ料理BARをやるという。見に行くと確かに良さそうな物件だが、RUIくんは飲食のド素人。一体どうなるのやらと思っていたら、あれやれよという間に地元が集まる大繁盛店になってしまった。

開店前「メニューを見てアドバイスをくれ」といわれ、冷奴だけで6種類あったため、「こ、これはタイ料理じゃないんじゃない? 冷奴専門店…?」と絶句したところ、RUIくんに「何を言ってるんだよ! 豆腐は日本。日本はアジア。アジアはタイだろ!!」と逆ギレされ、「この店は数ヶ月後になくなるな…」と僕が思ったのは懐かしい話。いまでは腕の上がった本格的なタイ料理をツマミに、たくさんの女性が訪れている。

なぜRUIくんのお店に女性客が殺到しているのか?  それはRUIくんが性格の良い、超絶ワイルド系イケメンだからだ。下は女子高生(駅前のティッシュ配りの際にRUIくんにカバンを預けるのがブームになっている)からマダムまで、ガッチリ女性のハートをゲット。僕は彼と7年以上一緒に飲んでいるため、酒場での数々のアクシデント、たとえばRUIくんを巡って女の子同士(それもRUIくんとは初対面)がキャットファイトを繰り広げたりなど、「こんなに人はモテるのか…」という衝撃的な事件を目の当たりにしてきたため、女性に繁盛するのも素直に納得できる。この店長、超絶ジゴロなのだ。それにしてもここ最近のRUIくんのモテっぷりはハンパない。営業中にファンの女子高生から手作りのお弁当が届けられるお店があるだろうか? 断じて否だ!

女性は癒されに。男性はあなたがモテに感心あるのであれば、勉強しに行くお店である。

住所:東京都世田谷区松原3-42-4
TEL:03-3321-6415
営業時間:18:00~翌5:00 無休

草彅洋平(くさなぎ・ようへい) 1976年東京生まれ。(株)東京ピストル代表取締役として、プランナー、編集、執筆、ディレクションなど幅広い業務をこなす。編著に『作家と温泉』。
http://www.tokyopistol.com/