今月の特集

今月の「世田谷」
リオープンした世田谷美術館を小林エリカさんと訪ねる

昨年7月1日から改修工事のために休館していた世田谷美術館が、人と自然にやさしい美術館として、3 月3 1 日にリオープンしました。空調設備を新調し、バリアフリーもより充実。改修を機に、世田谷ともゆかりの深い彫刻家、向井良吉の大型レリーフ《花と女性》を地下の広場に新たに設置したと聞き、作家・アーティストの小林エリカさんと一緒に美術館を訪れました。

取材・文 小林英治 写真 川村麻純


新収蔵作品 向井良吉《花と女性》 1969年 アルミニウ厶
この作品は、1969年に開業したホテルプラザ(大阪市北区大淀南)のロビーを飾っていたもの(ロビーでは1面ではなくコの字型に設置されていた)。ホテルプラザが1999年に営業を終えたあとショールームを開業した(株)大塚家具が、2010年12月に閉店後に建物の解体の際に引き取り、各地の美術館へ受け入れ先を探していたところ、作家とゆかりの深い世田谷美術館と出会い、寄贈されることになった。

散歩しながらドローイング

―― 今日は用賀駅から遊歩道を歩きながら、砧公園を抜けて美術館まで行きましょう。エリカさんは世田谷美術館にどんなイメージをお持ちですか?

やっぱり美術館と一緒に砧公園も思い浮かべますよね。私は東京育ちのせいか、大自然というより都会の中にある公園やお庭が好きなんです。そこに美術館もあるというのはとても嬉しいです。実は行くのはすごく久しぶりで、バスでしか行ったことがなかったので、お散歩しながらはすごく楽しみです。

―― 今日はスケッチブックを持ってきていただいて、道中で目に留めたものをドローイングで描いてもらえたらと思っていますが、さっそく何か見つけたようですね。


やさしく甘い香りを放っていたのはヒイラギナンテン

この黄色い小さな花からいい香りがします。何でしょう?葉っぱはヒイラギみたいですけど、背は低いし、こんな花が咲くのは知りませんでした。帰ったら調べてみよう。

向井良吉《花と女性》

―― 今回新たに移設されたこの作品は1969年の制作で、大阪にあった旧ホテルプラザ(1969~1999年)のロビーに設置されていたものだそうです。

思っていたより大きいですね。レリーフのモチーフに、翌年開かれた大阪万博に向けての空気というか、当時の時代の雰囲気がよく表れている気がします。近寄ってみると、お花や女性の顔や髪の毛まで細かくて素敵ですね(…と熱心にレリーフを描きはじめるエリカさん)。

―― 作者の向井良吉(1918~2010年)は世田谷に長く住んでいて、世田谷に住むアーティストたちが集う親睦会「白と黒の会」にも参加していました。彼らメンバーのコレクション展が2階で開かれてますので、行ってみましょう。

今日は、この展示に合わせて「白と黒」のお洋服を着てきました。見に行く展示に合わせてコーディネートすることもお友達とする楽しみのひとつです。


描いている途中に雨が降ってきたことも、
にじんだドローイングを見て思い返す

「白と黒の会」の仲間たち


親睦を深める「白と黒の会」の仲間たち

―― パンフレットによれば、会の規則はかなり自由で、「食ったり飲んだり、描いたり作ったりして、白と黒の会となる」とメンバーの1人が1955年当時の新聞に書いています。

なんかこの写真からも楽しそうな様子が浮かんできます。こういう芸術家たちの交流が世田谷美術館の源泉になっていることがよく分る展示ですね。そして、今の世田谷の若いアーティストたちはどこで集まっているのかも気になってきました。

―― エリカさんは美術館のどんなところが好きですか?

展示してある絵や彫刻は、全部それぞれの違う時間や場所で作家の手によって作られて、そして今ここに1つに集まって自分が観ているんだと思うと、いつも不思議に感動しますね。それと同時に、ここにかつての時間もあれば、1階の区民ギャラリーでは今の人が撮った写真展をやっていて、いろんな時間が一堂にある。美術館がそういう場所であるということが好きなんだと思います。

カフェ・ボーシャン

―― 地下には新しくカフェがオープンしました。お店の名前は所蔵作品の素朴派を代表するフランスの画家アンドレ・ボーシャンからつけられています。彼はもともと庭師だったようです。

お庭つながりなんですね。世田谷美術館は、砧公園の敷地内にあった大きなクヌギの木を囲むようにして設計されたとさっき学芸員の方がおっしゃってましたが、ピッタリですね。

―― ちょっとお腹も空いてきたので、ガレットを食べて帰りましょうか。

いいですねー。美術館にカフェがあると、それだけで行っちゃったりすることもあるから、ひとつ楽しみが増えました。



カフェでくつろぎながら展覧会の感想などを話すのも楽しい

世田谷美術館
〒157-0075 世田谷区砧公園1-2
Tel.03-3415-6011(代表) ハローダイヤル 03-5777-8600
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
開館時間:10:00~18:00(展覧会最終入場は17:30)
休館日:毎週月曜日(その日が祝・休日の場合は開館、翌日休館。ただし5月1日は開館)
[アクセス]
・東急田園都市線「用賀」駅から徒歩17分、または美術館行バス「美術館」下車徒歩3分
・小田急線「成城学園前」駅南口から渋谷駅行バス「砧町」下車徒歩10分
・小田急線「千歳船橋」駅から田園調布駅行バス「美術館入口」下車徒歩5分
※お車でお越しの方は、来場者専用駐車場をご利用ください。美術館まで徒歩5分

小林エリカ(こばやし・えりか) 1978年東京生まれ。作家。2007-08年ACCの招聘でアメリカ、ニューヨークに滞在。現在、東京在住。著書にアンネ・フランクと実父の日記をモチーフにした『親愛なるキティーたちへ』(リトルモア)など。5月にはミュージシャンphewとの”Project UNDARK”としてCD『Radium Girls 2011』をリリース予定。クリエイティブユニットkvinaのメンバーとしても活動中。http://www.homesickless.org/flowertv/