西谷真理子「女子の強気」

第4回 加藤良子(「レプ ラス」デザイナー)

LEP LUSS 2012-13 秋冬コレクションより。発売は7月以降。

文 西谷真理子(編集者・high fashion ONLINE チーフエディター)

バランスを取るというのが女子力

レプ ラス(と間が空く)という、シンプルでとてもいい服を作るブランドがある。デザイナーは男女のデュオで、加藤良子さんは、その片割れだ。もう一人は、井下田成司さんという男性である。

レプ ラスの服を継続して見てきたが、この服は細くて骨格のしっかりしている加藤さんにしか似合わないのではないかという疑問があった。正確に言うと、ずっとそう思ってきたのだが、このところ様子が変わってきた。以前は、シャープだけど、どこか着るのが難しい服、という印象だったのが、服に温かみが感じられるようになり、着やすくなり、少しコンサバになった。この変化は、どこから来ているのだろう?

「最初は、アイディアやメッセージを盛りこむことを優先して考えていたのですが、あるときに、自分たちの服には、人に着てもらうという視点が欠けているね、という話になって、それから、理屈で考えることから、着たい、楽しい、きれいという心の状態に従う方向に切り替えたのです。アイディアの部分はなくすのではなく、二番目にしました。そうしたら、どんどんまわりの反応が良くなっていったのです」

子どもの頃から、とにかく手を動かしてものをつくることが好きだった加藤さんは、おしゃれが好きというより、服という「もの」に惹かれてファッションの道に進んだ。専門学校時代はいろいろなアイディアを出して斬新な服をデザイン。四角ばかりで構成した服や三角ばかりの服などを作って賞を受賞し、パリのオートクチュールの専門学校に留学。そこでもいい成績を修めて、イヴ・サンローランのデザインチームに入り、帰国後はイッセイミヤケに入社したという優等生だ。でも、優秀なだけでは、ブランドは運営できない。「努力の仕方を変えたんです。服は人に着てもらって、役に立ってこそと思っていますから」とさらっと言ってのける加藤さんの女性的な部分を、パートナーの井下田さんはこう評する。

「一言で言って、バランスを取るのが上手ですね。男は入り込んでしまうと、とことん、夜も寝ないで働いたりするけど、彼女は集中力がすごくて、寝るときはさっさと寝るし、ぼーっとしている時間もある。メリハリを付けることが、ある種身を守る本能として備わっているのかなと思いますね」

なるほど。ハードワークはしっかりこなし、ストレスをためないように生活を組み立て、道端に咲いている花にも気づけるようでいたい、という加藤さんは、女子力を最大限生かしているということになるのだろうか。やっぱりこれから世の中を変えていくのは、女子力かもしれない。

加藤良子(かとう・よしこ) 1979年兵庫県生まれ。神戸ファッション専門学校からパリのシャンブル・サンディカル・クチュール学校へ編入。卒業後、イヴ・サンローランのデザインチームを経て帰国。イッセイ ミヤケに入社し、3年後、再び渡仏。帰国後、2008年に井下田成司と共同でレプ ラスを設立。’09春夏、東京コレクションに初参加。「シンプルな中にあるデザイン」をブランドコンセプトに、シャープなカッティングを用いたミニマルで上品なデザインを発表。 http://www.lessplusdesign.com/