草彅洋平「世田谷酒日記」

第五酒 三軒茶屋 久仁

「久仁」と書いて「くに」と読む。

三軒茶屋の食べログランキングの上位に常に位置し、圧倒的なコストパフォーマンスと絶品のもつ料理で知られている名店だ。僕はウワサで立ち寄り衝撃を受けて以来、事あるごとに「久仁」を利用している。場所はそれなりに駅から遠く、茶沢通りを下北沢方面に歩いて12分、といった不便な場所に関わらず、何故そこまで久仁に行きたくなるのか、といえば、それは安い、美味い、そして何より酔えるということにとにかく限る。1杯300円の酎ハイ、330円のサワー類が、とにかく酔う。2杯飲めばフラフラ。最初「今日は疲れているのかな…?」と思ったが、そうではない。恐ろしいほどに焼酎が濃いのである。連れも酩酊したので、焼酎を一体どれだけ注いでいるのか盗み見たところ、ジョッキの半分近くまで波波と注がれているのを見て合点がいった。つまり徹底したサービス精神のなせる酎ハイということだ。

メニューも「もつ焼き」が1本100円から。150円の「おしんこ」、300円の「煮込み」、380円の「〆さば」など激安価格が並び、どんなに飲んでもお会計は一人2,000円を越えることはまずないといえる。まさに庶民派。僕が大好きなのは300円の「がつ刺」「しろ刺」「レバ刺」だ。薬味に「ニンニク」と「しょうが」を選べるが、ここは2つを混ぜた「ミックス」を頼もう。これがまた絶品なのでオススメだ。

久仁には独自ルールがあって、ビールは瓶ビールのみ、というのはよくある話だが、使用する取り皿は一人1枚限り、というのがある。初回入店時、追加でお皿をもらおうとするとピシャリと怒られた、ということが僕にはあったので、それから気をつけるようになった。

「しょうゆを入れすぎないように…」と自然とお皿の扱いに敏感になる。一枚の小さなお皿に、厚あげ、もろきゅう、えいのひれ、さまざまな食材が載せては消えていく。そして最後は酔っ払って何も覚えてないのだけど…。

住所:東京都世田谷区太子堂3-18-2 
TEL:03-3410-7806 
営業時間:17:00~23:00 
定休日:日曜・祝日

草彅洋平(くさなぎ・ようへい) 1976年東京生まれ。(株)東京ピストル代表取締役として、プランナー、編集、執筆、ディレクションなど幅広い業務をこなす。編著に『作家と温泉』。http://www.tokyopistol.com/