西谷真理子「女子の強気」

第5回 雪浦聖子さん(sneeuw デザイナー)

文 西谷真理子(編集者・high fashion ONLINE チーフエディター)

sneeuw 2012-13 AWより

Clean & Humorを打ち出す理系の女子力

 

雪浦聖子さんは、東大工学部卒である。30数年以上ファッションジャーナリズムの片隅に身を置いてきたが、東大卒のファッションデザイナーに出会ったのは初めてである。今は、東大の中にfab.というファッション研究会のようなものもあるから、今後は珍しくない時代が来るのかもしれないが、なぜか?と、改めて考えてみる。ファッションとは、わざわざ東大まで行った秀才がやるほどの仕事ではないからなのか、東大卒というステイタスと、ファッションデザイナーというステイタスとが釣り合わないからなのか? 回答はみなさんにお任せするとして、ともかく、雪浦さんは、こういう道筋でファッションデザイナーになった珍しい人なのだ。

ブランド名はsneeuwと書いて、スニュウと発音する。オランダ語で、雪のことだ。オランダ語を使ったのは、大学時代に見た「ドローグ&ダッチデザイン」展(新宿OZONE,2006年)の鮮烈な印象が、自分のデザイン活動の一つの基点だと認識しているから。ドローグ(droog=dryのこと)というのは、日常的なありふれたものにアイディアやユーモア、アイロニーをプラスして独創的なデザインを生み出すというコンセプトのもと1993年にオランダで結成されたデザイン集団/ブランドだ。高校時代からデザインに関わりたいと、漠然と考えていた雪浦さんが、東大に入ったものの、第一希望の建築学科ではなく、船舶海洋工学科に進級することになり、将来を模索する中で出会った、一つのきっかけなのかもしれない。この時に感じた「Clean & Humor」を、その後ESMOD時代には、自分の作品コンセプトにし、そのままスニュウのブランドコンセプトとしても使っている。

最初の展示会は、2009年7月。そこから6シーズン、数は少しずつ増えているが、基本はあまり変わらない。いろいろな着方のできる歯切れのいい色使いのカットソーを中心に、ニット、パンツ、コートやジャケット、靴、バッグ、アクセサリー。シンプルだけど、ディテールが特徴的な日常服のラインナップである。ファッションコンテストで受賞するとか、一流ブランドに籍を置くとか、パリコレクションに参加するとかの、ファッションデザイナーとしての「花道」にはあまり関心のなさそうな雪浦さんだが、今後、新しい存在感を放ってくれるような気がする。それは、パリやミラノの豪華さとは対極のオランダや北欧などの価値観に立った日常的なファッションの探求であり、東大卒の頭脳が、そういうことを可能にする世界的なファッションシステムを考えてくれるかもしれない。

この秋、雪浦さんは、自分サイズのsneeuwとは別に、現在アトリエをシェアしているSTOFの谷田浩さんと新しいブランドWalternatifをスタートするそうだが、ここでも、また、こういう手があったのね! と私たちを驚かせてほしいものである。

雪浦聖子(ゆきうら・せいこ)
1978年生まれ。少女時代はエンジニアの父親の転勤で全国を転々とする。東京大学工学部を卒業後、住宅機器メーカーに勤務。その後ESMOD JAPONで服飾デザインとパターンを学ぶ。卒業後‘YEAH RIGHT!!’にてアシスタントを2シーズン経験。2009年、sneeuwを立ち上げる。http://www.sneeuw.jp