草彅洋平「世田谷酒日記」

第七酒 三軒茶屋 ONSEN(その3)

現在、三軒茶屋の温泉水バー「ONSEN」は、オープンから2ヶ月が過ぎた。あっという間である。毎日のようにたくさんの人が訪れてくれるのもあって、いつも面白く楽しい。「遊びに来たけどクサナギくんはいないの?」と呼び出されるので、ほぼ毎日のように店に顔を出してしまう。そのため、タクシー代がかさみ、酒臭くなった。よく「飲食店の人が自分のお店で酒を飲んだら体を壊して終わりだね」といったウワサ話を耳に入れてはいたが、いざ自分がそうした立場になると、これは真意であると納得したほどだ。いくらなんでも35歳の峠を超えて毎日のように酒を飲むのは不健康。先日めざましテレビに、健康に良いお店という流れでお店を紹介いただいたのだが、僕の立場だと体に悪くなるお店というのが可笑しな話である。温泉水の効能も、僕には効かないようである。

さて、そんな温泉水バーというコンセプト自体も崩れてきてしまった。僕がももいろクローバーZのお仕事をしたこともあり、ももクロ好きの友人が大挙してお店に押し寄せるため、店内にはオープンからひたすらアイドルソングが鳴り響いているからである。ヒドイ時はまったくももクロを知らないお客さんがいるにも関わらず、ファンたちがサイリウムを振って、コールを行う。「頼むからドリンクも揃えてくれないかな? れにちゃんはバイオレットフィズ。しおりんはハイボール。あーりんは桃酒。ももかはモヒート。かなこはレッドアイで頼むよ」「温泉マークの湯気を5本にして、5色にすればももクロBARになるから看板を変えてくれ」などと提案される始末。そのアイデアはいつか活用しようと思うが、店内はしっちゃかめっちゃかで、アイドルファンの聖地のようだ。

お客にはそんなアイドル・ブームを良しとしない連中もいる。彼らが代わりにオーディオケーブルを奪い取ってかけたのが、なぜかB’zだった。それ以来、深夜となると日々B’zが爆音で鳴り響く。B’zを聞いてひらすらカウンターでヘッドバンギング。恐れをなして普通のお客さんが帰ってしまうかと思いきや、「最高でした。またお願いします!」と懇願されるほどの大人気だ。こうなると、もう普通の飲食店ではない。このお店がどこへ向かうのか、ひたすら不安である。


傍若無人にももクロで歌い踊る人々。
あまりにもひどいので、ももクロDAYは月・木に限定した。

ONSEN
世田谷区三軒茶屋2-13-10
TEL:080-3932-3390
営業時間:20:00~5:00頃(貸し切りメインの営業です)

草彅洋平(くさなぎ・ようへい)
1 9 7 6年東京生まれ。(株)東京ピストル代表取締役として、プランナー、編集、執筆、ディレクションなど幅広い業務をこなす。編著に『作家と温泉』。
http://www.tokyopistol.com/