西谷真理子「女子の強気」

第8回 中山路子さん(MUVEIL デザイナー)
「ちょっと壊れたかわいさに惹かれるんです」

文 西谷真理子(編集者・high fashion ONLINE チーフエディター)


MUVEIL 2012-13秋冬コレクションより

MUVEIL(ミュベール)は、中山路子さんが、冨田靖隆さんと2002年に始めたブランド、MOSSLIGHT(モスライト)を2007年に解散して、その半年後に始めたブランドだ。

モスライトでは、ヒロ杉山さんが参加したりと、現代アートの感覚を盛りこみ、「コンセプトに向かって作品を作っていくような感じ」だったが、主に、冨田さんがコンセプトや空気を作り、中山さんが服を作るというなんとなくの分業体制は、時間が経って、それぞれの作りたいものが微妙に変わってきたため、デュオの活動に終止符を打ち、それぞれがソロとして活動を続けることにした。

デザイナー活動の第2幕として始まったミュベールであるが、「初めは何も考えられずに、走り出した」のが、2、3年経つ頃から「かわいいもの、かわいくて毒があるもの」をブランドの価値観の中心に据えたあたりから、どんどん人気が出て、ブランドとして安定。5年目の今秋は、表参道にショップを出すまでになった。女子の心をつかんだミュベールの「かわいさ」って?

「私は、完全にかわいいもの、ただ美しいものにはあんまり惹かれないのです。たとえば、自分の好きなかわいいものを考えていくと、子ども時代の記憶に行き当たるのです。ピュアさと、わがままで残酷な感情がもつれあっているような。こういう世界が自分の表現したいものなのかなと思います」。そしてなぜか、コレクションのテーマに頻繁に登場するのがグランマ=おばあちゃんだ。おばあちゃんは、いろいろなものを見てきていて、少女の悪さにもウィンクしてくれるような存在だ。「ミュベールの服は、大人の女性に着てほしいと思っています。その大人というのは、極端に言うとおばあちゃんなんです。女性がマダムを通り越しておばあちゃんになっても着てもらえる服を作っていきたいのです」。このニュアンスは、多分男性にはわからないだろうな。

9月7日にオープンするショップ「ギャラリー・ミュベール」は、ミュベールの世界観を伝える場にしようと思っている。九州で活躍する建築家の二俣公一さんを起用して、華やかな商業施設よりは、公共建築に近いものをリクエストした。オープンに合わせてウェブサイトもスタートするが、それもハイテクを使ってアナクロに見えるものをオーダーするという。少しずつ見えてきたぞ。

アトリエのスタッフは全員女子。「少女みたいな人も、少年みたいな人も、おじさんみたいな人もいますが、共通するのはものづくりに対する母性です」。

中山さんが投げる変化球。これが人気があるというのは、なんだかうれしい。日本のファッション市場も成熟してきたのだ。

左は、毎シーズン登場するグランマチャーム

ギャラリー・ミュベール(9月7日OPEN)
東京都港区南青山5-12-24 シャトー東洋南青山B1F
TEL:03-6427-2162
営業時間:11:30~20:00 不定休

中山路子(なかやま・みちこ)
東京都出身。服飾の学校を卒業後某アパレルメーカーに就職。2002年10月MOSSLIGHTを設立。2006S/Sコレクションより海外に進出。海外でのSHOP展開がスタートし活躍の場を広げる。2007S/SでMOSSLIGHT解散。2007-08A/WよりMUVEILとして新しいスタートを切る。2012年9月に、新しいコンセプトショップ「ギャラリー・ミュベール」が表参道にオープンする。http://www.gallerymuveil.com/