草彅洋平「世田谷酒日記」

第九酒 東北沢 チェリー

あなたが「宇宙に行こう」と友だちに誘われたら、迷わず行ってみることだ。行く先は東北沢。トボトボ夜道を歩いていけばボロボロの外観のスナックがる。恐る恐る扉を開くと、店内ではドラッグパーティーが開催されているわけでもなく、至る所に「自分ファン」「夢は死なない」「幸せな失恋」といった「ありがたい」お言葉が貼られ、財津和夫の記事の切り抜き(ママがファンなのだ)や常連客であるTOKYO No.1 SOUL SETのBIKKEの写真が散見できる。カウンターには将棋盤が置かれ、酔っ払いながら手合わせ可能だ。2、3杯飲めばもうベロベロ、異次元空間のような独特な空間にノックアウトされ、気分はまさに「宇宙」である。

このお店の名前は「チェリー」という。フェス「温泉音楽」を開催している田中宏和さんに紹介されて以来、僕が最近もっぱら飲みに行くお店で、僕らの仲間内ではこのお店に飲みに行くことを「宇宙に行く」と呼んでいる。チェリーに行くことは、ちょっとしたイニシエーションなのだ。

下北沢で飲んでいるとふと誰かが宇宙に行きたくなってくる。知らない人が行くと不思議体験に必ず喜んでしまうお店なので、そうやってどんどん周りで宇宙旅行が広まっていった。お店でどんなサプライズが待っているかは、自ら行ってみて確かめて欲しいが、一度でも足を踏み入れればチェリーファンになることは間違いない。

このお店がなぜ宇宙と呼ばれるのかはナゾだが、オススメのスナックの盛り合わせの皿にアルミホイルが巻かれていたり、トイレの便器もアルミホイルが巻かれていたりと、何かとアルミホイルが活用されていることから、鮮烈なシルバーイメージ=宇宙船を想起し、そう呼ばれるようになったのかもしれない。故・松田優作もひとりでふらりと飲みに来てくれたというからには、何か不思議な引力があることは間違いない店なのだ。

このお店のママはビンコさんという。ビンコさんと話しているととっても癒される。なんだろうね?

僕のおつまみのオススメはボイルウィンナー。アツアツでジューシーだ。

いつもこれとスナックでビールを飲み、宇宙から帰還する。千鳥足で、大気圏を突入して、家に帰る。


ビンコママが書いてくれたメッセージと僕!

東京都渋谷区大山町12-5
(*世田谷区北沢から近いと思っていたらなんと所在地は渋谷でした! お許しを☆)
TEL:03-3469-2988

草彅洋平(くさなぎ・ようへい)
1 9 7 6年東京生まれ。(株)東京ピストル代表取締役として、プランナー、編集、執筆、ディレクションなど幅広い業務をこなす。編著に『作家と温泉』。
http://www.tokyopistol.com/