草彅洋平「世田谷酒日記」

第十二酒 しゃけ小島

妖怪ダイダラボッチの足あとの形の池があったことからついた地名とされる「代田」にほど近い「代田橋」駅は世田谷区にあるのだが、甲州街道をまたぐと杉並区になってしまう。そんな訳で代田橋商店街にある「しゃけ小島」も世田谷の飲み屋とばかりに思っていたが、実は杉並区の飲み屋であった。だが、そこはご愛嬌ということで今回ご紹介させていただく。

しゃけ小島のある商店街は、近所でもゴーストタウン商店街として名高いエリアとして知られていた。どうにも店が流行らない。環七と甲州街道でぶつ切りにされているため、なかなかひと目につきにくいということもあるのかもしれない。そんな商店街に何度も足を運ばせてしまうしゃけ小島の魅力は、やはり素晴らしい店作りにあるといえる。

まず第一にコンセプトが明快だ。シャケ専門店という隙間をついたメニュー構成が良い。ちょっと飲んでシャケ定食を食べてれば、誰もが心から満たされてしまう。第二にセンスが良い。昭和の和定食屋をイメージさせるような内装はノスタルジックで居心地が良い。グラッパグラスで飲む日本酒は粋で、目黒「とんかつとんき」のような女性店員の頭に白い布巾を巻いたキリリとした姿、男性店員の蝶ネクタイ姿は、見ているだけで食事が楽しくなる。第三に料理が非常に美味しいということだ。しゃけ小島ができたおかげで、友人も自分もこんなにしゃけが食べたくなる日があることを初めて自覚したほどだ。

大学生の頃、テレビで学者がノドに良い食べ物として、しゃけと林檎を歌手に薦めていた。しゃけはノドの筋肉をつくり、りんごはのどを潤すというのだ。長年扁桃腺持ちで苦しんいた僕は、その日からしゃけと林檎をなるべく食べるように心がけているのだが、そうした意味でも有難いお店である。

話は逸れるが、働いている男性が熱烈なももいろクローバーZのファン、つまりモノノフなのだが、しおりん推しで、しゃけ色ピンクのあーりん推しではないというのが、不思議で仕方がない。

しゃけ小島
杉並区和泉1-3-15 めんそーれ大都市場内  
TEL: 03-6240-8409
営業時間:
[水] 11:30~14:00(L.O.) 18:00~24:30(L.O.)
[火・木~土] 18:00~24:30(L.O.) [日] 17:00~24:00

草彅洋平(くさなぎ・ようへい) 
1976年東京生まれ。(株)東京ピストル代表取締役として、プランナー、編集、執筆、ディレクションなど幅広い業務をこなす。編著に『作家と温泉』。東京ピストルでてがけた日本近代文学館内の文学カフェ「BUNDAN COFFEE & B E E R 」も話題に。http://www.tokyopistol.com/