西谷真理子「女子の強気」

第12回髙山エリさん(スタイリスト)
まだ見ぬかわいいを求めて疾走するスタイリスト。

文 西谷真理子(編集者・元high fashion ONLINE チーフエディター)

髙山エリさんは、スタイリストだ。雑誌や広告などのファッション写真のスタイリングをする人。もしくは、タレントの衣装をスタイリングする人。でもそういう辞書的な言い方で高山さんを語ることはできない。そもそもスタイリングってみんな軽く使うけど、どういうこと、本当は? どうして洋服の背景になべやいちごやケーキが出てくるの? 子どもはどうして頭の上に椅子を載っけてるの? 髙山さんの作ったページを見ると、そんな楽しい謎が噴出してくる。

まずは、彼女のホームページ、その名も〈髙山エリドット混ム東京〉(http://takayamaeri.com)という変換ミスのようなタイトルのサイトをのぞいてみてほしい。そこに掲載されている写真には、実際に雑誌や広告で使われたものがあれば、「作品撮り」といって、カメラマンと一緒に好きなイメージを作ったものもあるが、どれひとつとして独特の匂いを発散していないものはない。個性が立ち上がっている。真っ白な空間の中でぽつんと発光する赤やピンク。暗闇の中の明るい青や黄色。森の中で逆立ちをする少女。丸見えのパンツ。このイメージに浸っていると、不思議な感覚になってくる。普通なのに普通じゃないかわいさ。どぎつさも過度なギラギラもないのに、小さなトゲがある。そんなかわいさ。

やくしまるえつこさんや二階堂ふみさんのスタイリングをして、今や人気スタイリストの一人になっている髙山エリさんだが、最近「スタイリストって何なんだろう?」と思い始めたという。自分がかわいいと思う感覚を曲げたくなくて「絶対これじゃなきゃ嫌だ!」と妥協せずに突っ張ってきて、気がついたらその個性をおもしろがってくれる人たちが世の中にはいて、仕事が来るようになったという幸運な人だが、でも、運も才能のうちである。その分、髙山さんは人の何倍も仕事をするし、たった一枚の写真のために一週間かけて背景のセットづくりだってしてしまう。それもこれも彼女の中にある「かわいい」を求める切実さのなせる技なのだが、その人が「スタイリストって何?」と自問する。

思い始めたら矢も楯もたまらず、なんと、自分で雑誌を作ることにした。そして生まれたのが、写真の『ギリギリマガジン』である。これがA2判というありえない判型の4ページ。第1号の表紙(写真参照)と中ページを飾るのは、今いちばん息が合っている二階堂ふみさん。色がトレードマークの髙山さんなのにこのドレスは黒を選んだ。中ページにはA2 判の全段を使って細かい字がびっしり。ここで髙山さんは「スタイリストって何?」に彼女流に答えている。かわいいをつかまえようとしても、つかまえたかわいいはもう違うもので、「毎日今日のことしか想えない」など、一見思いついたことを次々に書き流しているように見えるけど、ファッションの核心を突いた鋭さがある。黒いドレスについても「これから始まる『今』。色は塗れなかった。」と、言明している。その言葉がまたかわいい。そしてこのかわいさは、女子のものだ、と言ってしまいたい。まもなく出る第2号では、なんと私との対話が登場するらしい。取材に行って取材されてしまった。このスピード感が髙山エリを作っているのだろう。 

髙山エリ(たかやま・えり)
1983年3月生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業。『装苑』『spoon』などの雑誌や広告、『二階堂ふみフォトブック 進級できるかな』などのスタイリストとして活動する傍ら、’12年夏より印刷物『ギリギリマガジン』を編集、発行するなど、その活動は多岐に渡る。
髙山エリドット混ム東京 http://takayamaeri.com
リエマヤカタ(日記)http://blog.takayamaeri.com/