西谷真理子「女子の強気」

第16回 藤原美和さん(シアタープロダクツ デザイナー)
女性の考える女性の色気。

文 西谷真理子(編集者・元high fashion ONLINE チーフエディター)
 

藤原美和さんのデザイナーとしてのデビューショー。2013-14年秋冬シアタープロダクツコレクションより
 
 
藤原美和さんは、3月に発表された2013-14秋冬から、シアタープロダクツの新しいデザイナーとして登場した。シアタープロダクツは武内昭、中西妙香というデザイナーデュオとプロデューサーの金森香が2001年に設立したブランドなのだが、中西さんが子育てのためデザイナーを降板し、代わって、それまでアクセサリーラインのデザイナーだった藤原さんが就任するというインディペンデントのブランドとしては珍しいケースとなった。一体どう変わるのか、変わらないのか、業界が注目する中、就任第1回目のコレクションは開催されたのだが、予想以上の好評に、改めて藤原さんの実力のほどが認知されることとなった。

テーマはOLの出社と退社を追った「Friday.」。シアタープロダクツは初期にも、OLの制服をテーマにオフィス家具のショールームでコンセプチュアルなコレクションを見せたが、今回のはまったく違った。服の多くは、会社に着ていけそうなシンプルなもので、ここ最近シアタープロダクツらしいとされていた花柄やフリル、レース、ロング丈のスカートなどのロマンティックなアイテムが姿を消し、代わって、凝ったカッティングやシャープな衿あきの、都会的かつセクシーな服がグンと増えた。そのセクシーさがなぜかとても女性受けがいいのだ。

「大人の女性の自信がある部分を、ちょっとした見え方で、ぐっと色っぽくなるような洋服を作りたいのです」とか細い声で藤原さんは語るのだが、この「それぞれの女性の自信のある部分」にアンダーラインを引いてほしい。ただ胸を強調するとか、脚を露出するとかというのではない。脚に自信のある人は、思い切ってマイクロミニのパンツを、首のラインに自信のある人は、襟もとがきれいに見えるカッティングを、背中がきれいな人は背中の開いたニットを、という選択可能な提案が、とても着る側に寄り添っていて、ただのステレオタイプなセクシーではないことを女性たちは見抜いたのだ。

よくこの年齢で、と思って経歴を聞いて納得。藤原さんの実家は父の代から相模原で洋品店を営んでいて、子どもの頃から、家族全員で季節の模様替えをしたり、商品のアクセサリーをこっそり付けて遊んだりして育った。美しい服やアクセサリーや包装紙にときめくばかりでなく、店に来る大人の女性たちの着飾りたい気持ちもしっかり見てきたことが、彼女の鑑識眼のベースにはある。また父の前に甘味処を経営していた祖父の存在も大きい。祖父は、秋になると家族全員をキノコ狩りに連れ出すのだったが、その時の身支度は三つ揃いに帽子を被り、革靴でシトロエンに乗って繰り出すというこだわりようだったそうだ。その板についた西洋風着こなしと、趣味が高じて日本画の表装も手がけるほどの日本の美意識の両方を吸収したことを、藤原さんの細胞は記憶しているのだろう。シアタープロダクツの持つ実験的な部分は武内さんに任せて、自分は女性のためのほんの少しの幸せを提案したいと謙遜するが、女性が今求めているのは、まさにそういうところなのではないだろうか。
 
 
藤原美和(ふじわら・みわ) 
シアタープロダクツ デザイナー。 1979年、神奈川県生まれ。エスモード卒業後、アパレル会社を経て、2009年シアタープロダクツ入社。11AWよりensemble THEATRE PRODUCTS をスタートし、アクセサリーや小物のデザインを手がける。13AWよTHEATRE PRODUCTS のデザイナーに就任。代表・デザイナーの武内昭とともにデザインを担当する。