学び is フリーダム!

vol.2 「盆栽は、宇宙だ」

文 自由大学学長 和泉里佳

日本には古来から6,000種類の植物があるとも言われています。これだけ多様な植物がひとところに生えているのは世界の中でも珍しいとのこと。そして日本人はその植物と共に生きる知恵を蓄えてきました。葉や実を食べたり、根を薬として服用したり、茎を編んで暮らしの道具にしたり、花を愛でて楽しんだり。さまざまな風土で移り行く二十四の季節とともに、いろいろな植物と暮らしてきた歴史と文化があります。

盆栽チョキチョキは古くさいおじいちゃんの趣味?いえいえ、そんなことはありません。今やBONSAIは海外でも注目を集め、ヤングな女子たちにも絶大な人気を誇っているのであります。こんなにも面白くて粋な趣味、おじいちゃんだけのものにしているなんてもったいない。良いモノは分かち合おうのシェア精神でいきましょう。盆栽も歴史を辿ると、中国の盆景が由来だとされていますが、良いモノを取り入れて、文化としてさらに盛り上げてしまうのは日本人の良いところですね。

自由大学の「新盆栽学」は、28歳の盆栽男子塩津丈洋さんを教授に、参加者はWEBデザイナーにプログラマー、教師や銀行員など、仕事も年齢もバラバラの人たちが毎週土曜日の朝にワイワイやっていたりしますが、いわゆる古典的な盆栽に学ぶ自由があるからこれが面白い。

盆栽を植えるには、まず土づくりから。粒が大きく通気性の良い土や、水はけの良い土、弱酸性の土、田んぼの土のように水分や養分をたっぷり保っておける土など、植物によって使う土とその配合が決まります。ではどのような土を使うのか?ヒントはその植物の故郷に有り。その植物がもともと生えていた山に近い環境をつくるのです。

土の準備が整ったら、器えらび。余分な水を流す底穴はもちろん、土や根にも空気が届くよう素焼きの器、できれば釉薬は外側だけに塗られているものがいいとか。そしてようやく植物へ。大切なのは、丁寧に、丁寧に、根をほどくこと。箸を使って付いている土を落とします。根を傷つけないように。細い根も、太い根も、長い根も、短い根も、みんな繋がっている。普段土の中で目に見えないけれど、見えている木と同じ高さまで深く、横の広がりもある。根が傷つくと木も弱る。根が元気だと木も健やかなのです。

盆栽は愉しみ方も奥が深い。複数の植物をひとつの器に植える寄せ植えでは、高さや広がりなど空間的バランスの他に、季節の流れを楽しむための時間的バランスも緻密に考えられています。春一番に咲く小さな花が終わった頃に、新緑が覗き、秋にはモミジが紅葉し、冬には落ちる。1つの鉢でいろいろな顔を楽しむことができるのです。季節の移り変わりを楽しむこともまた、日本を楽しむことに繋がっている。幹の曲がった様子に美を見出したり、激しい人生に例えたり、自由に想像を巡らすことからクリエイティブな時間が始まる。寄せ植え・一本立ち・苔玉いろいろなスタイルそれぞれが小さな宇宙なのです。 

BONSAI NEW WAVE. 盆栽は、宇宙だ。

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新盆栽学(日本を楽しむ学部) 育てよう緑の小宇宙、盆栽の世界。
教授:塩津丈洋 キュレーター:明石優 
https://freedom-univ.com/lecture/bonsai.html
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和泉里佳(いずみ・りか) 
1979年生まれ。自由に生きるための学びの場「自由大学」学長。IID 世田谷ものづくり学校をメインキャンパスに、社会が求める様々なテーマをキュレーションし、自分らしい生き方や働き方を考える新しい学びを企画している。