今月の特集

今月の「ものづくり」
「デザインあ」岡崎智弘さんに教わるコマ撮り動画のつくり方

NHK Eテレ(教育)で毎週土曜に放送されている「デザインあ」。佐藤卓・コーネリアス・中村勇吾というトップクリエイターたちが集結し、身の回りに当たり前に存在しているモノを「デザイン」の視点から見つめ直し、斬新な映像手法と音楽で表現する番組です。番組では毎回コマ撮りのストップモーションアニメが登場。作品を寄せているクリエイター岡崎智弘さんに、その面白さと作品のつくり方を教えてもらいました。

 

―― まずはデザイナーの岡崎さんがコマ撮り動画を始めたきっかけを教えてください。
岡崎 もともとはデザイン事務所で、印刷物を中心に広告の仕事をしていました。プロのカメラマンが持っているCanon 5Dというカメラを使って、ポスターでもつくれないかと思い購入したのがきっかけです。

―― 入り口はカメラだったと。仕事でもなかったんですね。
岡崎 そうなんです。絵を描くのが好きで大学に入って、大学でデザインの世界を初めて知り、印刷物が好きなこともあってグラフィック・デザインを仕事にしてきました。動画をつくるようになるとは自分でも思っていませんでしたね。

―― 岡崎さんの作品は、無機質なアルファベットがまるで生き物のように動き出すのが面白いです。グラフィック出身ならではの発想でしょうか。
岡崎 コマ撮りの素材は1枚ずつの写真なので、グラフィック的なアイデアで構成できます。しかもグラフィック1枚では表現できなかったアイデアも、コマ撮りにすると表現できることがあるんじゃないかと思ったんです。そういう意味ではクレイアニメなどとは発想の起点が違うかもしれませんね。

―― ご自身のウェブサイト用につくったのが最初ですか?
岡崎 はい。単純につくることが面白いし、ストックしたアイデアは豊富にあったので、デザイン事務所で働きながら、週末ごとに「今日はこのアイデアを試してみよう!」と、実験の感覚でつくっていました。

―― そこから「デザインあ」の制作チームとして参加される経緯は?
岡崎 キャラクターではなくタイポグラフィを素材につくっていたので、TDC(東京タイプディレクターズクラブ)のコンペに応募したんです。何の賞ももらえなかったけど、審査員だった中村勇吾さんが覚えていてくれて、去年の初めに直接メールが来ました。お会いした3日後に再び呼ばれた時は、もう番組の制作会議でした。尊敬するデザイナー、NYのステファン・サグマイスターの言葉で「新しい分野の仕事を始めたかったら、まず自分でやってみな」というのがあるのですが、仕事とは関係なくカメラを買って、勝手にコマ撮り動画をつくっていたら、まさにその通りになりました。

―― 岡崎さんの「ものづくり」の原点には何かありますか?
岡崎 子どもの頃から化学の実験は好きでしたね。それから毎日、虫を捕まえていました(笑)。単純にアイツらの生態が好きで、図鑑を見てどこにいるかを想像して、探して捕まえて、観察する。そのプロセスは、実は今とほとんど変わってないんです。「アイデアを探して、表現方法を見つけて、実験し観察する」。違うのは、その先に「楽しみを人と共有する」という部分があることですね。

―― 今後やってみたいことはありますか?
岡崎 今までやっていた印刷の仕事に、映像をやることで得た視点を持ち込んで、印刷と映像が一体になったプロモーションなどをやってみたいですね。それから映像と音楽の関係にも興味があるので、PVもぜひつくってみたい。アイデアはいっぱいあるので、これからもどんどん実験して試していきたいです。

実際にやってみよう!
実際の作品制作の現場が見たい!とお願いすると、「IIDの3文字で何かつくってみましょう」と岡崎さん。すぐにアイデアがいくつも出てきました。その中から、氷でつくった3色の「I」「I」D」の文字が溶ける様子を長時間コマ撮りし、溶けて色が混ざったり、また固まったりするという案に決定。イメージは、「IIDに入居するさまざまなクリエイターが混ざり合う感じ」。2日にわたって、IIDで制作が行なわれました。


1. まずは異なるフォントで何種類もの「IID」の氷をつくります。プリントアウトした文字を元に発泡スチロールで型取り し、片面にカッティングシートを貼って、水漏れしないように 補強します。


2. 凍らせるための水を用意。色づけに使用するのはなんと食 紅!  絵の具だと色素が沈殿してムラなく固まらないのだとか。 今回は色鮮やかな赤・青・黄の3色を使いました。1文字ずつ 異なる色を注意深く注ぎます。予備も含めて12種類のフォント を用意。こぼさないように冷凍庫に入れて、一晩待ちます。


3. 1文字ずつ異なる色を注意深く注ぎます。予備も含めて12種類のフォントを用意。こぼさないように冷凍庫に入れて、一晩待ちます。


4. 翌日、カチカチの氷ができました。水が交ざってオレンジや黄緑になった「IID」ができるのも、予測できない面白さ。


5. 撮影のセッティング。三脚でカメラを固定し、その下に、LEDのライトボックスに載せたアクリルのトレーを水平を保ち、周りを白い段ボールで囲みます。


6. 氷をひとつずつ型抜きして、色とりどりの「IID」を並べていきます。全部で9種類になりました。いよいよ撮影の開始です。


7. カメラはパソコンに繋いであり、自動的に15秒に1回シャッターを切る設定にしてあります。あとは溶けるのをひたすら待つだけ。イメージ通りに溶けて混ざってくれるかは、神のみぞ知る!

そして出来上がった動画がこちら!

「IID」というカラフルな文字が溶け合う、不思議な世界です。

岡崎智弘(おかざき・ともひろ)
1981年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。デザイン事務所勤務と平行して映像制作に携わる。2011年9月より独立。SWIMMINGを設立。印刷物から映像制作までカテゴリを横断したデザインを行う。http://www.tomohirookazaki.com/