世田谷ものづくり学校

REPORT

2020 / 4 / 14(火)

イベントレポート |「ひとり出版社」のつくりかたとはたらきかた | IID Innovator’s File11

トークイベント「IID Innovator’s File」とは

新しい領域のビジネスを開拓したり、新しい場づくりや社会課題に挑戦している「イノベーター」をトークゲストとして招き、これまでの経緯、現在の活動、今後の展望について語ってもらうIID主催トークイベントです。

早いものでこれで11回目を迎えるこのトークイベントですが、今回のトークテーマは以下のようなものでした。

イベント前文

以前より紙の本が売れなくなり、多くの出版社や書店が苦境に立たされています。
本を買うときにはネットを利用することも多くなり、電子書籍という選択肢も増えました。

そんな状況の中で「ひとり出版社」という働き方を、複業の一つとして選んだ出版人がいます。
「ひとり出版社」とは、文字どおり社員1名で構成される出版社のスタイルで、その業務の多くをほぼ1人でこなすこともあるそうです。

そのつくりかたとはたらきかたは実際のところ、どのようなものなのでしょうか?

今回のIID イノベーターズファイルは、デザイン専門誌『デザインの現場』や書体デザイン専門誌『Typography』の編集長を歴任し、一人出版社兼デザインギャラリーの「Book&Design」を立ち上げたBook&Design 宮後優子さんをお招きして、複業としての「ひとり出版社」の働き方、そして一人でも本をつくれる「セルフパブリッシング」のノウハウについてもお聞きしたいと思います。

毎日決められたオフィスへの出勤って本当に必要?

今回は現在のコロナ禍の状況を考慮し、このIID Innovator’s Fileとしては初のZoom配信によるオンライン開催。このタイミングに合わせてイベント主催側としても運営スタイルを変化させる必要がありました。

そして奇しくも今回お招きした宮後さんは、いち早く柔軟な働き方を実践している1人。
今回のオンラインイベントの中でも冒頭に話されていましたが、宮後さんがそれまでの働き方に疑問を持ったのは2011年の東北の震災がきっかけだったとか。
震災の影響により、勤めていた出版社から一時的にリモートワークを指示された宮後さん。

実際にオフィスに出勤せずに働いてみたところ「あれ、全然仕事できるじゃん」と思ったそうです。
その後は「毎日決められたオフィスに出勤することって本当に必要?」と思い立ち、リモートワークや複業という働き方を模索していったそうです。

このお話は、まさに今のコロナ禍での僕たちの状況とぴったりと重なります。

「働き方改革」という政府からの号令ではなかなか変わらなかった僕たちの働き方が、コロナ禍という大きな強制力により、今まさに移り変ろうしているわけです。

そのせいか参加者の皆さんの中には、宮後さんのワークスタイルの変遷のお話に大きく頷いている方もちらほら。

ひとり出版社の価値とは

そして後半は宮後さんから「セルフパブリッシング」つまり一人でも本を出版できる方法についてのお話。

かつて紙の本の出版には、日販やトーハンなどの大手取次との口座開設という大きなハードルがありました。もちろん今もそれらの仕組みは存在しますが、今は新たな出版の手法としてAmazonのkindleなどの電子書籍に加え、株式会社トランスビューの注文出荷制という、小規模な出版社でも書店に本を配本できるプラットフォームの存在が出版のハードルを比較的下げました。それが「ひとり出版社」というビジネススタイルが増えていったきっかけになったそうです。

ただし、紙の本には昔ながらの商習慣や流通の仕組みがある為、出版経験がある方のアドバイスなしではスムーズな出版は難しいという指摘も。当然資金も必要ですし、ISBNコードなどの細かい仕組みもあります。この辺りについては、宮後さんの長年の経験からのノウハウを惜しみなくお話いただきました。


そして最後に宮後さんに今後やりたいことを聞くと、「本つくる人を増やしたい」という言葉が。
そもそも宮後さんがひとり出版社をスタートした理由の一つに、売上データ重視の大手出版社ではなかなか出版しにくいニッチな本づくりをすること、つまり自分が出したい本を出す、という思いがあったそうです。

宮後さん主催のBook&Designをはじめとした「ひとり出版社」という存在が、書店やネットに並ぶ本が画一化してしまうことを防ぎ、出版業界が多様化することに繋がるという事実。これが今回の参加者にとっては一番の大きな学びだったのではないでしょうか。

その宮後さんの思いを受けてかどうかはわかりませんが、最後に参加者に向けて出版にチャレンジしたいかどうかを質問してみると、複数の方から手が上がっていました。

ひょっとすると、今回のIID Innovator’s File vol.11の30名近くの受講者の中から、新しい「ひとり出版社」が近い将来誕生するかもしれません。もしそうなってくれたら企画者としてはとても嬉しい限り。

今後もセルフパブリッシングなどのテーマについては、企画として取り上げていきたいと思っています。
ぜひ定期的にIIDのスケジュールページとPeatixをチェックしてみて下さい。

リンク

「ひとり出版社」のつくりかたとはたらきかた | IID Innovator’s File 11

開催日
:2020年4月14日 (火)
開催時間
:18:30 〜 20:15
参加費
:1,000円
主催
:IID 世田谷ものづくり学校
協力
:Book&Design
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