世田谷ものづくり学校

CONTENTS

世田谷ものづくり企業探訪 vol.4| リフルシャッフル(世田谷区代田)

時代に合った個性で生き残る。フリル服とデジタル刺繍のリフルシャッフル

「世田谷ものづくり企業探訪」の4回目は、時代と共に街並みが少しずつ変わりつつある下北沢で、量産の服とは一味違う特徴のあるものづくりをしている洋服屋さんを訪れました。

取材記事「世田谷ものづくり企業探訪」は、ものづくり学校の事務局スタッフが世田谷区内の様々なエリアに根付く「ものづくり」の場へ毎回訪問し、事業者のインタビューをおこない「世田谷のものづくり」の特徴やそれに関わる人々を発信していくシリーズです。

取材・文:石塚和人(IID 事務局)

京王・小田急線下北沢駅の北側の西口を出てすぐの細い路地を入っていくと、味のあるアパートの1階部分に「リフルシャッフル」という看板。そんな隠れ家的な場所にお店はあります。
今回は代表の久保田さんにお話を伺いました。

意外なきっかけから入ったアパレル業界

石塚 今日はありがとうございます。まず基本的なことになりますが、リフルシャッフルさんは今年で創業何年になるんでしょうか?
 
久保田さん 今年で12年目になります。実は結構長くやってるんですよ。
この場所はアパートの元駐車場部分だった所を改装しています。ここの前は狛江で営業をしてまして、7年前に下北沢に移転してきました。
 
石塚 この事業を始められる前は、久保田さんはどんなことをされていたんですか?
  
久保田さん リフルシャッフルを立ち上げる前は、某大手保険会社の神奈川の支店で営業をしていました。そこでは営業所トップの成績の営業マンだったんですが、働きすぎて体調を崩してしまったんです。
回復後も保険の営業に関しては一区切りしようと思い、その保険会社の元同僚に対して外見や服装に関する提案する事業をスタートしました。
 
石塚 こう言っては何ですが意外な経歴ですね。
 
久保田さん 保険というものは商材で差別化しにくいので、やっぱり人で差別化するところがポイントなんです。
顧客に合わせた服装や人と被らない外見などを意識してました。今のビジネスとは全く逆ですね。洋服は商品ありきなので。
洋服で溢れる店内。
代表の久保田さん

ミセス系からゴシック&ロリータ系へ!

石塚 そこからどのようにして今の洋服のテイストにたどり着いたのかが気になります。
 
久保田さん 最初のうちは特に店舗を持たずに、保険会社時代の顧客の中心だったミセスに合わせた、セレブでエレガントな服を保険のセールスレディに対して提案していました。
ある時期「KERA!」という若者向けファッション雑誌が『エレガントゴシック』というトレンドを発信していたことがありまして。その雑誌からリフルシャッフルの洋服を掲載しませんか?というオファーがきました。
そして掲載したところ、これがかなり受けたんです。
 
石塚 急に方向性が180°変わりましたね。
 
久保田さん これまでの30代〜50代のマダムから、原宿にいるようなバンド好きの10代〜20代の女の子にターゲットが一気に変わりました。
そこからは『これからは若いお客さんが来るから商品もこのままじゃヤバい』って感じで。
お客さんにお店の方向性を曲げられた、というのが正直なところです。
 
石塚 なるほど。
 
久保田さん その後は、いよいよサブカルやゴシックロリータ方面に本腰入れるぞ、という時になって雑誌「KERA!」さんと同じ出版元が発刊していた専門誌「ゴシック&ロリータバイブル」が無くなったり、当時の洋服の仕入れ先が潰れたりとか、あまりよくないことが続きます。
 
石塚 え!それは困りましたね。
 
久保田さん その影響で、潰れてしまった卸先の要望もあり、商品の在庫やデザインを引き取り、仕方なく自分でオリジナルのデザインをスタートすることになりました。
本音としてはオリジナルデザインはコストがかさむのでやりたくなかったんですが、仕入れ先がどんどん潰れていくのでやらざるを得ませんでした。
 
石塚 時代に合わせて方向性を変えていったら今の事業になった、という感じなんですね。

デジタル刺繍ミシンで、オンリーワンな手法を発明

石塚 今の業態にたどり着いた経緯がわかってきました。
そしてリフルシャッフルさんの特徴と言えば、IID内の工房「ファブラボ世田谷」でワークショップをしていただいているデジタル刺繍がありますよね。
 
久保田 デジタル刺繍はそもそもロットの問題を解決する手段として導入しました。
オリジナルの洋服をOEM(外部企業へ委託制作)などでつくろうとすると、どうしても100着とかそれ以上の最低ロットが発生するわけです。
そこでTシャツのプリント機か、刺繍ミシンを導入するかの二択だったんですが、ブラザーさんの勧めもあり刺繍ミシンにしました。
  
石塚 そういった経緯だったんですね。
 
久保田さん ただ思ったより、ミシンの制限が多く、意外とできないことがあったんです。
でもうちのお客さんはいわゆるオタクな人が多いので、メーカーが推奨するミシンの制限内での刺繍、つまり誰でもできることをやっても意味がないと思ったんです。
そこでたどり着いたのがキャラクターの刺繍でした。
 
石塚 あえて『できない』と言われていることに挑戦してしまうのがクリエイター気質の久保田さんらしいです
 
久保田さん うちでキャラクターの刺繍を縫うことができた時には、ミシンメーカー大手のブラザーさんもびっくりしたようです。
の当初の設計思想としては、単純図形や文字などを想定していたようなので。
 
石塚 ミシンを使って他にこういった刺繍をしている洋服メーカーはあるんでしょうか?
 
久保田さん おそらくないと思います。ブラザーさんからデンマークにはそれに近いことをやっている方がいると聞いたことがあるくらいで。
 
石塚 ミシンメーカーも想定していなかった、オンリーワンな手法を発明してしまったというわけですね。すごい!
 
久保田さん 努力の甲斐もあって、ブラザーさんからこの機械を取り扱う代理店としても認められることになりました。
石塚 キャラクターの刺繍ですが、一般の方からの反応はどうでしたか?
 
久保田さん デザインフェスタなどにもデジタル刺繍ミシンを持ち込んで展示した時にはあっという間に人だかりができてました。
あとは、IID 世田谷ものづくり学校内のファブラボ世田谷で長年に渡ってデジタル刺繍ワークショップを開催したことで、少しずつ認知されるようになってきました。
ファブラボ世田谷内で定期開催しているワークショップの様子。
石塚 仕入れ品から始まり、顧客や時代に合わせていくうちに徐々に嗜好性が強く、他社と差別化できる商品にたどり着いたわけですね。
 
久保田さん そういった嗜好性の強いものだと、いわゆるクロージング(店員がセールストークによって顧客が購入を最終決定する補助をすること)もあまりいらないんです。

リフルシャッフルさんは、この刺繍ミシンを活用してトートバックを作り、2019年は世田谷みやげの仲間入りを果たしました。
今年加入したばかりなので件数は少ないながら、世田谷みやげの冊子をみた方からこのトートバックの取り扱いが実際に決まったケースもあるとか。

世田谷みやげ
世田谷区内のさまざまなお店から、世田谷にゆかりのあるお店自慢の逸品を募集し、「世田谷みやげ」として指定しているもの。(公財)世田谷区産業振興公社の主催で、今年で14年目を迎える。

VRキャラクター開発から人材育成まで、やりたいことはたくさん

石塚 ここまでは現在の事業にたどり着いた経緯をずっと聞いてきたわけですが、今後リフルシャッフルとしてチャレンジしたい事業や展開について教えていただいてもいいでしょうか?
 
久保田さん もうすでにスタートしているんですが、他社と協業してVRを活用した次世代の音声合成キャラクターを監修しています。
これまでのリフルシャッフルの事業を通しての様々な経験が、このキャラクター開発にも生きているんです。
もうすでに『王女シャッフル』というオリジナルの世田谷ご当地キャラクターも誕生していて、いつかIID 世田谷ものづくり学校でもそのキャラクターをお披露目する機会が持てたらと思ってます。
 
石塚 それは面白そうです!
 
久保田さん IID 世田谷ものづくり学校で続けているデジタル刺繍ワークショップから、趣味ではなく実際に刺繍した商品を仕事として製作・販売する人を輩出したいと思ってます。
また文化服装学院さんもこの刺繍ミシンに興味を持ってくれているので、専門学校での講座にも関われればと思ってます。
 
石塚 VRキャラクター開発から人材育成までと、かなり展開が幅広いですね。リフルシャッフルさんの今後が本当に楽しみです。

取材を終えて

時代に合わせて生き残るために選んだ道が、自然と自社の個性をつくりあげてきたというリフルシャッフルさん。
むしろ時代の変化に柔軟に適応しながら多様な製品作りをしてきたからこそ、厳しい洋服作りの業界で12年以上生き残ってこれたのかもしれません。

そのリフルシャッフルさんの姿勢を象徴的していたのが取材の最後の方で「リフルシャッフル」という店名の由来を聞いた際に、久保田さんがしてくれていた話。

「リフルシャッフルっていうのは、マジシャンがよくパフォーマンスの最初にトランプを鮮やかな手さばきで混ぜると思うんですが、そのカードを混ぜる動きのことを意味してるんです。ミセスエレガントでもゴシックロリータでも、その人に合わせたテイストを組み合わせていろんなファッションの提案ができる。そんな店でありたいと思ってます」

そんな素晴らしい思いが店名にこめられた、リフルシャッフルさんに関する取材でした。
みなさんも下北沢に足を運んだ際には、ぜひその個性的な洋服達を実際に目にしてみてください。

リフルシャッフル

営業時間:12:00〜19:00
定休日:火曜
住所:東京都世田谷区代田6-1-18 102
トップへ戻る